スキップ・スキップ・ビート!

アクセスカウンタ

zoom RSS 『出雲物語』〜こぼれ玉〜 bP2(side:玉藻)

<<   作成日時 : 2008/02/24 19:48   >>

ナイス ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 0

 一度下がった楓が
 すぐに朱塗りの酒器と杯を もってあらわれた。

 やや遅れて
 残りの二人の女房が
 さまざまな食物を載せた盆を 持ってきた。

「あとは、私がおります。皆様は どうかおやすみを」

「「はい」」
 
 楓の言葉に 二人の女房たちは 丁重な挨拶と共に下がっていった。

「ほら お飲み」

 楓は まず 帝の杯を満たし
 帝は 手ずから 私の杯に注いでくださる。

 とろりと甘い香りが 漂う。

「梅の甘露酒でございます。紀の国からの献上品ですわ。」

 …梅の…お酒?

 おそるおそる 口に含む

 とろりと甘く なんともすがすがしい香りがする!

「紀の国…か。あと半年もすれば さぞや 梅林の梅も 香り豊かに咲き誇るだろうな。」

「はい。あの地は 全山が梅。紅、白、桃…種類も 彩りも すべてが 日の本1です。」

 帝のお言葉に 祐規様がお答えになる。

「その木の下に玉藻を立たせたら 家持の気分が 味わえそうだ…。『春の苑 紅にほふ』…」

 …え

 えっと
 そ、その歌なら 梅じゃなく…

「『下照る道に出で立つ少女』と結ぶ歌でしたら、梅ではなく 桃でございますよ、帝」

「あ〜…そ、そうだったか…?」

 祐規様の鋭いご指摘に
 なんとも 具合の悪そうな帝のお顔

「万葉集の中でも 有名なお歌ですのに…お情けない。ほんに ようございました。
 余人がおりませんで。」

「か、楓!」

 …。

 さすがに
 いとこ同士というだけはある…。

 楓も祐規様も
 本当に 帝とは 隔てなく お仲むつまじい

 血のつながりがあるとは
 こんなにも やさしく暖かいものなのか 

「玉藻!そなたは なんぞ 勘違いしてはいませんか!?」

「確かに 幼いころから 共に育てはした!育てはしたが おまえは しょせん親なし子!!
 千早とは 兄妹でも なんでもないのだ!!」

「千早が やさしいからといって おろかな夢など見ぬことです!!」

「おまえは 生涯 神にお仕えし 舞や楽の腕を磨くことのみ 考えればよいのだ!」

「親にさえ捨てられたおまえを ここまで育ててやった恩 忘れたとは言わせませんよ!?」

 今年の正月。
 数え14になった祝いにと…千早が贈ってくれたヒスイの腕輪。

 それを見た おじ様方が 激昂して私を責めた。

 腕輪は すぐに取り上げられ
 千早も 厳しく 説教された…らしい。

 悲しかった

 でも

 うらやましかった…千早が

 うじ素性の知れぬ 孤児など 近寄らせまいと
 わが息子を 守ろうとする おじ様たちの愛情が…。

 これほどに 親に愛され大事にされている 千早がうらやましくて…

「いいんだ!梅でも 桃でも 桜でも 紅葉でも!
 玉藻が立てば きっと そこだけ輝くんだから!」


 …!?

 いきなり
 ばっと 帝の胸の中に 抱き寄せられてしまった

 は?

「やんちゃ坊主ですね まるで…」

「まるで…は 無用ですわ!お兄様」

「祐規〜!楓〜!」

 私の耳のすぐ横に 帝のお口があって…
 うらみがましいお声が じかに 響いてくる。

「こんな意地悪兄妹は ほっておいて 飲もう!玉藻!!」

「あ、あの…わ、私…も…」

 「もう 飲めません…!」と 言おうとした口は ふさがれてしまった。

 帝の唇に。

 とろりと甘い梅のお酒が のどの奥まで滑り込んできた。

 ぼうぜんとする私の耳に 帝がささやく。

「半年後は 共に 紀の国にいこう。」

 やさしく微笑みながら 甘く低い声で…

「春うらら。満開の梅の花の中 そなたとそぞろ歩けば きっと 天上にある心地だろうよ。」

 夜着からさえ 薫り高くのぼってくる 伽羅の香

 高貴な香
 この方の香り

 その…
 甘い香りに

 酔ってしまったのだろう

 ふうっと 意識は 遠くにかすんでいった

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 3
ナイス ナイス ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文

スキビ素敵サイトさま

『出雲物語』〜こぼれ玉〜 bP2(side:玉藻) スキップ・スキップ・ビート!/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる