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zoom RSS 『出雲物語』〜こぼれ玉bP6〜(side:楓)

<<   作成日時 : 2008/03/01 07:00   >>

ガッツ(がんばれ!) ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 4

「玉藻様!梅壷の女御様が!こちらに…!」

 女房の一人が 焦ってかけこんできた。

「…え?」

 驚いた玉藻様が 
 皇太后様から 賜ったばかりの 絵草紙から顔を上げられた。

「な、なんの先触れもなく!ご無礼な!」

「そのような…失礼ですよ。梅壷様は、帝の第一のお妃様でしょう?」

 さっと 絵草紙をしまわれて 玉藻様が立ち上がられた。

「上座に お席のご用意を。」

「は、はい!」

「あらあら。あわただしいこと。大掃除でも なさっておいででして?」

 間をおかず 梅壷が やってきた。

 開口一番 嫌味炸裂!

 その…ふざけた言いぐさに かっとなる!

「先触れもなく 舞い込んできた タチの悪い虫が おりまして。ご無礼申し上げました。」

「か、楓!」

「…!」

 にらんでくる女狐の顔を 真っ正面から にらみ返す。

 …臣籍降下したとはいえ
 私の亡き父上は、先々代の帝!!

 左大臣ごときの娘に 後れはとらない!

 女狐も それは わかっているから 正面から私に敵対はしない!

 悔しそうに にらむのが せいいっぱいだ!

「う、梅壷女御様!どうぞ、こちらへ!」

 玉藻様が 平伏して とりなす声に ようやく狐が動いた。

「…この…香!」

 座について 即 梅壷の顔色が変わる。

「あ。お、お嫌いでしたら 今 消させ…」

 ちょうど 女狐の背後で 香炉から薄煙が上がっているのだ。

「帝の…連理枝伽羅!な、なぜ!」

「連理…?」

 玉藻様が きょとんとしておられる。

「帝から…是非に 玉藻様に 使うようにと 賜りました。」

 正直に ありのままに 申し上げる。

 わなわなと 目前の狐の 美しく紅が塗られた唇が震える。

「ど…どれほど…お願いしても…絶対に 一かけも お譲りくださらなかったのに!」

「…?あ、あの…?」

「…玉藻様…。お主上から おの香の由来 お聞き及びでないのですか?」

「ゆ、由来…って?そ、それは 伽羅の中でも 殊に気品のある香だとは 思いましたが…。」

「5年前、帝が 即位なさってすぐ 淡路島は由良の浜に 大きな古木が流れ着いたのです。
 …その太さは 一間(1,8m)、長さは5間(9m)もあるものが。」

「まあ?!」

「岩礁に削られ 波に洗われて ほとんど皮もはがれてつやつやとなめらかな状態で…
地元の者は 早速 薪にしようと 一部を切って 乾かし 火に投じたところ…。」

「伽羅の香木だったのですね!」

「はい。長い年月の間に より 味わいが深まって それは 極上の香木でございました。」

「しかも、元は二本の木が よりあって一本になっている なんともゆかしい連理の枝!」

「…これは まがいなく 新たなる帝のご即位を 寿いだ 神様の賜り物に相違ない…と
 宮中に 献上されたのです。」

 私の説明に さらに 女房達が 言い添える。

「帝は いたくお気に召し、ご自身専用の香になさり…ご両親にさえ お分けにならず…」

 香といえば 常に これのみ…だ。

「…そ、そのような貴重な香…!」

「玉藻様とは 香りも 共にそろえたいと仰せで。」

 ばきっ

 何かが折れる音に 思わず ハッとした。

 …!?

「…出雲の方…。」

「は、はい!」

 うっ!

 梅壷女御から もはや 造り笑顔さえ 消えている!

 袖の中に隠れた扇の先が 妙な方向に ねじまがっているのが…見える!
 
「あなたが ここにこられて もはや…ひと月…。」

「…は、はい。」

「毎年霜月の半ば…10日後に行われる 神嘗祭には 私どもは 管弦を奏して 神に
 祈りを捧げることになっておりますの。」

 …!

 し、しまった!

 そんなこと すっかり 忘れて!

「う、梅壷様!た、玉藻様は まだ 来られたばかりで…!」

「かりにも 後宮に お部屋を賜っているのです!」

 狐の視線の先が 部屋中の調度に走っていく

 螺鈿細工の見事な紫檀の文机
 玉虫の飾りの付いた厨子
 瑪瑙や瑠璃白玉の付いた文箱

 毎日毎日 帝が 玉藻様に 贈られる 美しい品々

 今更ながら
 
 すさまじく豪奢な 調度品やお道具の数々に 気づいたようで

 一つ一つ
 お道具を見ていくたびに 女狐の顔がこわばっていく!

「当然 管弦の 心得は おありでしょう!?」

「そうですわ。女御様のおっしゃるとおりです。」

「あさましい手練手管を弄して 殿方を 誘うだけが 能ではございませんでしょう?」

 狐の言葉に 女御付きの女房達も 下品に吐き捨てる!

 こ、こいつら!

 ひと月前は あんなに 余裕綽々 玉藻様を バカにしてたくせに!

「…そ…!」

 おかわいそうに
 玉藻様は 真っ青になってしまわれた。

「さ、こちらに 箏と譜をお持ちしました。」

「10日後 宴でご披露するのですから 充分 お稽古くださいませね。」

 箏と譜を置き
 言うだけ言い放つと さっさと 狐一行は 出て行った。

 平伏して見送る 玉藻様のお肩が震えておられる!

 あいつら!!

 心中 怒りが煮えたぎる! 

「…相当に…恐慌状態のようだよ。後宮の皆様は。」

 つい先日
 こっそり 兄が 教えてくれた。

「帝は…本当に もう 他のどなたにも 見向きもなさらなくなってしまったから…。
 順番も日付割り当ても 何もかも 全部 飛んでしまって…。」

 順番?日付割り当て??

 意味の分からない言葉はあったけど

 とにかく
 後宮の女どもも 

 ようやく 帝の「気まぐれ」などではないことを わかってきたようだ!

「「玉藻様!」」

 女房達の いたわしそうな声に 我に返る。

「…っく」

 …!
 
 必死に 泣くのをこらえているお声!

 このひと月
 何度 このようなお声を聞かされたことか!

「玉藻様!」

 思わず その小柄なお体を抱きしめた!

「大丈夫!大丈夫です!帝なり 皇太后様なり上皇様なりに ご報告して…!」

 帝はむろんのこと
 一目で 玉藻様を いたくお気に召したらしい上皇様と皇太后様なら

 絶対に 守ってくださる!

「…だ、大丈夫…。弾けます…箏…。」

 ゆっくりと 玉藻様が お顔をあげて
 ほほえんでみせる いつものように 優しく

 はかなく

 寂しく…!

「練習…しますから…少し 一人にしておいてください。」

「…はい…。」

 その切ない目に 何も言えなくなって 言われるがまま 退出する。

「大丈夫!もう…もう ひと月たったもの!…あと あと ひと月 ひと月の辛抱!」

 お部屋から離れるとき
 晩秋の風に乗って かすかに 聞こえた気がした…。

 玉藻様の…悲痛なお声が!

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
本当に溺愛ですね〜vvv

香りまで一緒したいなんて///玉藻ちゃんを自分色に染めたいのねv
こうゆう所は可愛いのに帝o(^-^)o

あら〜〜女の嫉妬は怖いですね!
コン
2008/03/01 22:28
こんにちは、ことりんさんv引き続き、こちらで「出雲物語」楽しませて戴いておりますv
本編で語られなかった補完(で良いのかな?)話ですね♪今頃、帝の玉藻ちゃんに対する寵愛の深さに気付いた梅壷の女御に「遅っ!」とツッこみつつ、梅壷の女御を前にしても玉藻ちゃんの御為に一歩も引かない楓の姿に「ハブvsマングースの戦い」のような壮絶さ(主に精神面で・笑)を想像しつつ、パソコンの前でニヤニヤしてます(笑)
……にしても玉藻ちゃん。素直というか鈍いというかそれだけ幸せに縁が無かったから、なかなか現実を受け入れられないのかもしれませんが、梅壷さんがどんなにお願いしても帝は譲ってくれなかったって漏らしちゃったのに、そんなお香を貰ってて「あと一ヶ月の我慢」なんて思ってるんですね〜……いやん、帝、想いの一欠片も伝わってないですよ!(笑)帝なんてあと一ヶ月どころか、来世まで離しかねない勢いなのに!(笑)
まだまだ玉藻ちゃんに後宮中の女性達から嫉妬による攻撃が続くとは思いますが、同時に玉藻ちゃんの才も周囲に知らしめる事が出来るので、この後の展開も楽しみにしておりますねvではでは失礼致します★

URL
2008/03/02 11:23
コン様 コメントありがとうございます!

香に着目してくださってうれしいです!*^-^*
平安時代の貴族にとって『香』はトレードマークのようなものでして
おしゃれという段階 遙かに超えて 重要な意味持っていたらしいのです ^-^

献上品の流れ古木の香…となれば 同じ体積の金塊にも匹敵する価値がありました。

源氏物語なんか読むと すさまじいですよ 女の嫉妬!!
毒のませようとしたり!
生き霊になってとり殺したり…!(((((><))));

ことりん
2008/03/04 20:24
蕾様
別館にまで ご来訪ありがとうございます!

ええ…表には出せない …な お話です。
こぼれ玉にまで ご感想お寄せ頂いて光栄です!m(_ _)m

ええ…帝の想いはまだ伝わってないです まったく! ^-^;
こういうとこ しょせん 玉藻ちゃんは まだお子ちゃまです。
最初に「なんて お綺麗な方かしら!」と 見とれてしまった梅壷女御の言葉を
素直に 純真に 信じ込んでしまってます!
だって ちょうど 自分でも そう思ってたことと ちゃんとシンクロしたので。
(『ひと月かふた月で 出られる』ってとこが)それだけを支えに 耐えてる
…という 時期です。

温かいお言葉 本当にありがとうございました!*^-^*

ことりん
2008/03/04 20:24

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