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zoom RSS 『出雲物語』〜こぼれ玉〜 bQ0(side:楓)

<<   作成日時 : 2008/03/18 00:09   >>

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「楓様、お主上のお渡りでございます。」

 …またですか!

「玉藻様は(誰かさんのせいで!)ぐっすりお休みですので 畏れ多きことながら…」

「起こさなくていいと いつも言ってるだろう?」

 じろっと 険しい目で にらんでくる。

 …!

 思わず 引いてしまう、いつもながら。

 帝は
 御簾の中に入り込んで 玉藻様の傍らにお座りになる いつものように。 

 その先が違ってた!

 いきなり
 よこたわっておられる 玉藻様のお体を抱き起こし お胸の中に閉じこめたのだ!

 …!?

「み、帝…!」

 止めようとした私の声は 目で封じられる。 

 薬湯のおかげで 玉藻様は 気付かないまま よくお休みだ。

「起きているときも…こんなふうに 素直によりかかってくれたら…。」

 そのお声が
 あまりにも 寂しそうで切なそうで哀しそうで

 『自業自得です!』…とは 言えなかった…さすがに…。

 帝がいつものように 指で触れていかれる

 玉藻様のお髪に ほほに 唇に お指に

 うっとりと 優しい目で…

 う”…!

 思わず 真っ赤になって 顔をそむける!

 同じことを 唇で なさり始められては 目のやり場なんか ありはしない!!

 …不器用な方…

 お気の毒な方…だ 本当に…

 権力目当ての女達は
 皆 自分こそが寵を得ようと
 必死で 競うように 帝に媚を売ってきた

 初めて
 ご自分が 本気で恋したときには
 
 どうなさればいいのか わかっておられないのだ。

「…ん…」

 …!

 玉藻様のお声!

 あわてて振り向く。

「…起きたか?玉藻…」

「…!み、みかど…っ!」

 愛らしいお声の中に ハッキリと走る おびえの色…。

「…今日は、甘い物を持ってきたのだ。一緒に 食べよう。」

 気付かぬ風を装って 帝が お優しくお声をかける。

「は、はい…」

「…祐規…あれを…」

「は」

 階(きざはし)にひかえていた兄上が 蓋つきの器を持ち運んできた。

 すぐ、御簾の中に入っていき、玉藻様に起きるお支度をしていただく。

 帝にお手を取られ、廊下に面した日の当たる一角に出てこられた。

「まあ、栗…!」

 生の栗を渋皮ごと 甘葛(あまずら)で煮ているものだ。

「丹波から献上された 極上の栗だよ。食べてごらん。」

 帝は 栗をつまんだ右手を 玉藻様のお口元に持って行く。

 左手は しっかりと 玉藻様のお肩を抱いたまま…だ。

 どうしても 始終 触れていなければ 耐えられないらしい!

「…あ?こ、このお味…お酒…?」

「ただの酒ではないのだよ、あててごらん」

 私や兄上にも ご相伴くださるので 早速 口に含む。

 …?!

 この香り この味わい
 未だかつて 口にしたことがない 美味だ!

「…葡萄…の香が いたします…。」

「あたりだ。これは 葡萄の酒で煮させたのだよ。」

「ぶ、葡萄のお酒…。」

「そちらは 今夜 寝る前に 飲ませてあげよう。」

 …。

 いつもの…寝酒…ね!

「遙か西方から 唐土(もろこし)の国を経て 運ばれてきた珍しい酒だ。きっと気に入る。」

 さりげなく 玉藻様を抱き寄せられる。

「一緒に 献上された 杯がまた美しくてね。闇の中でも 光るのだ。共に楽しもう。」

「は、はい…」

 ふぅぅ〜

 そうやって

 何かにつけて

 玉藻様を抱きしめては 髪やらほほやらに 口づけられるのは

 できたら やめていただけないものかしら!せめて 陽の高い内は!!

「…『葡萄の美酒 夜光の杯』…夢ではなく 現実にある物なのですね…。」

 は?

「ええ。彼らは、自分の周りにある物を 詩にしたのです。我等の想像が及ばぬだけです。」

「この目で見られ、味わえるなんて…夢のようです。」

「…はい。私も 感激で胸が熱くなります!」

「それにしても 今は 戦のない代で よかったです。」

「まことに!」

 は??

 兄上と玉藻様の 会話が 見えない!

「…?な、なんのことだ?」

「…政親様!」

 兄上の声が とがった。

「女には無用と漢籍から あえて 遠ざけられていた楓が 知らぬのは 当然ですが!
 あなた様は 習ったはずです!昔!!王翰の『涼州詩』を!!」

「お、おうかん?」

「…漢詩…なの?お兄様」

「そうだよ。とても 有名な漢詩なのだが…。」

 兄が わざとらしく 溜息をはく。

「『葡萄の美酒 夜光の杯 飲まんと欲すれば 琵琶 馬上に催す 酔うて沙場に臥すも
君笑うことなかれ(葡萄の美酒を夜光の杯に注ぎ 飲もうとすると琵琶の音が馬上から
起こる。酔っぱらって砂漠に無様に倒れたとしても どうか笑わないでおくれ)』…」

「『古来征戦 幾人か回(かえ)る(昔から 戦争に赴いて 帰ってこられた者は
何人いるだろうか)』…。哀しい 胸締め付けられる詩です。」


 兄の詠唱に続いて、玉藻様が しみじみとつぶやかれる。

 …。

 万葉集と古今集を そらんじられてることは 後宮の女どものおかげで知った!

 …でも
 
 玉藻様って もしかして かなりの…博学…!?

 文章博士の兄にも 匹敵するほどに!!
 

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